畜産業への余波

資源も技術も調達できる先進国は新品種の導入、農法の改善、灌漑網の整備などを通じて温暖化による減収を相当に克服できますが、技術と資本の貧弱な発展途上国は温暖化の熱ストレスと水分ストレスを克服できず、事態は悪化するだろうといわれています。

畜産業への余波

私たちの豊かな文明生活のシンボルの1つは、家畜家禽を飼ってたくさんの肉を生産し食べることです、近未来における所得の上昇と人口増とを考えると、畜産業への需要は増加し続けるものと思われます、一方畜産業は家畜家禽の生理機能を利用しての植物資源の肉資源への変換である事を考えると、交換効率への環境条件、特に温度条件の影響は重要な問題です、たとえば最近の日本における夏の異常高温は、乳製産、豚の肥育、ブロイラー生産や生卵生産に大きなダメージを与えています、したがって今度温暖化が進むと、畜産業にかなり大きな悪影響を与えると心配されています。

畜産は比較的冷涼な西ヨーロッパで始まり、世界中へ広がったと考えられます。それゆえ飼養されている家畜家禽の高温への耐性はあまり高くないようです、幼い個体とニワトリは別として、各家畜の好適な環境温度は20℃からマイナス3℃の間にあり、比較的に低温域を好むようです、乳牛(ホルスタイン)の適温域は5℃~15℃で、これ以上になると体温維持活動が激しくなり、27℃以上になると体温が上昇し始め乳量の低下と乳質変化が生じると報告されています、特に野外で飼われている家畜は強い日射と高い気温に晒されているので、増体速度が低下する事が報告されています、たとえば夏の温度が家畜が耐えうる限界に近くなる大陸性気候域(アメリカ、ロシア南部、オーストラリアなど)では、今後の気候温暖化は家畜生産へ致命的なダメージを与えると心配されています。

では野外にいる家畜には、どのような環境要素が作用しているのでしょか、太陽からくる日射、周辺からの赤外線放射、そして体内で発生する新陳代謝熱が牛の獲得する熱量の全体です、一方呼気を通じて顕熱と潜熱が体表温と気温との差に応じて顕熱と発汗によって潜熱が、更に体表全体から環境へ赤外線放射として熱が失われています、好適な温度域では獲得熱と損失熱とが上手く釣り合っていて、体調もよく乳の生産も高いのです外気温が高くなると、体外へ多くの熱を逃がすために呼吸回数を上げたり、発汗を多くするために新陳代謝活動を盛んにしなければなりません、35℃以上40℃近くになると体調維持が難しくなり、食欲もなくなって虚脱状態になる事が観察されています、より小型の家禽とくにブロイラー鶏では、日中最高気温が33℃~34℃を超えると熱中死が多数発生することが知られています。

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