害虫と作物と温暖化

我が国では、ハウス農業が広がり(約5万ha)により多くの南方系の害虫(オンシツコナジラミ、ミナミキイロアザミウマ、マメハモグリバエなど)が定着し、ハウス内の野菜や花に被害を与えています、もしもスーパーコンピューターの算出した今世紀末の温暖化気候が現実化するならば、現在農芸ハウス内で行われている害虫類の防除法が野外でも被害を及ぼすのです。

被害を発生させるには、一定以上のウンカ虫の密度が必要です、温暖な気候下では幼虫は速やかに成虫になり卵を産みます、卵は直ぐに幼虫になり成虫になって卵を産みます、温暖気候下ではこのプロセスを何回も反復して、ネズミ算なんぬウンカ算的に増殖して、イネに被害を及ぼすウンカ密度に達してしまいます。

昆虫学の分野では卵がかえって幼虫から成虫になり、そして卵を産むのに要する日数(n)を評価するために、有効積算気温一定の法則が広く利用されています、それは次のように表されます。

有効積算気温 = n×(Ta-To)

ここでTaは毎日の日平均気温、Toは発育ゼロ点の温度です、水田にいるツマグロヨコバイではTo=14.3℃、有効積算気温=480.2℃日が知られています、今世紀後半に予想される昇温2℃以下では、ツマグロヨコバイの棲息可能域がかなり北進し、北海道の殆ど全域でヨコバイは世代交代が一回は可能になります、それ以南では現在の気候よりは一回世代交代が増え九州南部では年間五回にも達します、3回以上の世代交代では数では、水田のヨコバイ密度は危険レベルを超え、放置できなくなるでしょう、その後の研究で次の条件で昆虫類の世代交代数の増加が大きい事がわかりました。

  • 温暖化による昇温度が大きい
  • 現在の年平均気温が高い
  • 昆虫の発育ゼロ点が低い
  • 有効積算気温が小さい

より温暖で多湿な地域から侵入し定着を図る害虫類、そしてじわじわと占有域を広げる数多くの雑草たち、それらからの作物を守る作業は大変です、土や水そして食の安全への強い要求のもとでは、過去の一時期にあったような化学合成農業に頼り切ることは許されません、害虫、雑草、作物、そして多くの天然生物たちが組み立てている耕地生態系の動きと働きとの理にかなって、それを助ける新しい総合防除法の開発と利用が必要です。